特殊詐欺の受け子として逮捕・起訴されたトモヤ(仮名、21)。保釈まで2カ月半近くかかった。
「出てこられたけれど、決して許されたわけじゃないからね」
警察署に迎えに来た父のヒロユキ(仮名、48)は、厳しい言葉をぶつけた。
「ごめん」とうつむくトモヤ。
逮捕後も何度か接見したが、直接会うのは21回目の誕生日を祝ったあの夜以来だった。
息子への失望、怒りは消えない。
それでも、帰ってきたことはうれしかった。
2人で車に乗り込んだ。フロントガラスの向こうには、北陸特有の灰色の雲が広がっていた。
特殊詐欺の被害に遭ったのは記者(28)の祖母(81)でした。連載の第6回は、「受け子」として逮捕された21歳男性の父の視点から描きます。
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トモヤは、たばことパチンコをやめた。やったことのなかった家事も積極的にこなすようになった。大学は自主退学となったが、資格の勉強を始めた。
息子の変化を、ヒロユキは感じとった。
トモヤの2回目の公判。
スーツ姿のヒロユキは証言台に立ち、宣誓した。隣でトモヤがつばを飲んだ。
弁護人が尋ねる。
「事件を聞いてどう思いましたか」
「妻から聞いて、まさかと思いました」
「なぜそう思ったのですか」
「私からしたら、口数は少な…